【前編】82歳の起業家が語る、スマホやクラウドファンディングも使いこなすパワーの源は? 東京タブレット研究会代表・山根明さん

昨年11月から今年1月まで「シニア世代向けスマホ講座で使用するiPhone 6s Plusを購入したい」というプロジェクトを実施し達成された、東京タブレット研究会代表で、「すまほ茶屋」という講座を開講されている、山根明さんにお話を伺いました。山根さんは御年82歳にして、スマホやクラウドファンディングも使いこなす精力的な方。そのパワーの源は?前編・後編の全2回でお届けいたします。前編の今回は、「すまほ茶屋」の事業や、起業にあたっての山根さんの想いをお話いただきます。

自分が困ったことを同じ目線に立って教えることができる、シニアの「すまほ茶屋」


――今まで大体累計でどれぐらいの方々が「すまほ茶屋」の講座に参加してくださったのですか。


山根:週に定期講座が火、金、土とあり、1回平均10人として30人、午前、午後で60人。それが4週と、不定期講座を合わせて年間3,000名弱の方が参加していると思います。

この「すまほ茶屋」の前から、パソコン教室を十何年かやっていました。2010年にiPadが発売されたから、もうシニアはキーボードよりもタッチだということで切り換えました。


――端末は、講座に来られた方に支給されるものなのか、ご自身たちで買ってから来られますか?


山根:今はもうほとんど受講生のうち半分は持ってこられます。けど、使いこなしていないんです。だから、使っていない人に使ってもらうというのが、私のコンセプト。講座は「すまほ茶屋」というネーミングにしたんです。それはわかりやすく言うと、駆け込み寺なんです。駆け込み寺は言葉としてネガティブだから、気楽に「茶屋」というネーミングにしたんです。で、平仮名の「すまほ」にした。


――今、従業員(会員)の方々は、大体どれぐらいいらっしゃるんですか?


山根:会員が42名、その中の20人ぐらいが講師登録もしていますけれど、常時活動しているのは12、3人です。シニアの方々は、自分が困ったことを同じ目線に立って教えることができる。講義で使うアプリは、講師が探してきます。テキストをつくるのに、みんな苦労していますけどね。市販のテキストというのは、紹介はするけれど、その使い方まで説明はしていないんです。トラブルのときの対応も書いていない。だからそれについてシニアのためにつくってあげています。


――講師の方々も、もともと受講生の方ですか?


山根:少ないですね。本当は、受講者の中から育ってきて講師になるのが理想なんです。でも、レアケースですね。圧倒的にはやはりパソコンに詳しい人がなるというケースが多いです。

私どもは、パソコン講師を養成する講座を持っているんです。だから定期的にこれは、という人はどんどん取り込んでいきます。シニア情報生活アドバイザーの講座もずっと十何年間やっています。シニアがシニアにパソコンを優しく教えるという資格。シニア情報生活アドバイザーの有資格者は全国で3,000名ぐらいです。

会員は、NPOができてから10年経ちますから、結構もう高齢化していますね。最高齢で88歳の女性です。Excelも教えるし、タブレットも教えます。

受講生の方で一番高齢な方は98歳の方です。90代の人、結構いらっしゃいますよ。そして、厚生労働省のWAMの受講者の属性は、アンケートによると70歳の女性がトップ。2番目が60代の女性、3番目に70代男性。女性が圧倒的に多いです。パソコン時代からそうですけど、男性3対女性7くらいですかね。


――今までたくさんの方に参加いただいて、実際に参加された方から、教わったことを活かしてこんな嬉しいことが実際にありました、という報告を受けることは?


山根:やはり講座の中で、「え、こんなことができるの?」という歓声とか喜び。これが私どものエネルギーなんですよ。

オープンスクールをやっていますが、去年参加された方で、ご主人が入院されていて、1日1回お見舞いに行く。けど、それ以外の時間はすることがないと言っていて。それで教えたのが、Amazonプライム。それで映画を見ているのね。昔の映画。メールも当然やっている。やっぱり生活の一部になって、暮らしの役に立っていると知ったときは嬉しい気持ちになりますね。

Facebookとブログで毎日情報発信することは「営業活動」


――シニアの方々は、FacebookとかのSNSはやっているんですか?


山根:SNSに関しては皆さんあまり好きじゃないですね。私は毎日Facebookとブログは更新しています。

その結果、どういうことになるかといったら、今はネットで調べたら何でもわかるんですよ。ということは、私が別に営業しなくても、向こうから探してくれる。

要するに、毎日情報発信することが営業活動。私どもNPOはお金がないですからね。私が毎日時間をかけてブログやFacebookを更新するのも仕事です。

で、来たものは大事にする。それから枝葉がつくじゃないですか。要するに、口コミです。


――今、60代以上の起業家の方々がすごい増えてきていると、よくニュースにも出ていると思うのですが、背景にはどういう気持ちがあるのでしょう?


山根:働きたい意欲はあっても働く場所がない。これが一番大きいことなんですよ。そうなると、起業するしかないんです。そういうことだと思います。

朝起きて行くところがある。会う人がいる。やることがある。それがなくなるんですよ、定年退職すると。そうなったときに、会社から離れるともう水のなくなった河童みたいになって。


必要なのは、アイデアとスキル、キーマンとの人脈、アピール力


――起業してずっと続けていくには、どのようなことが必要だと思いますか?


山根:今のうちに、どんな状況になっても食えるだけのスキルを持っておかないといけない。どんな企業でも、いつまでも続くとは限らないんです。世界経済もどうなるかわからない。

企画はアイデアとスキルと、それからもう1つ大切なのは人脈。この問題はあの人に聞いたら詳しいという人脈を持っているか。これを一緒にやろうという人脈が多いかどうか。その3つに尽きるんじゃないかと私は思っています。だからそれを今のうちに磨かないと。そのためにどうするかといったら、人の多いところへ顔を出す。これは若いときから億劫がらずにね。

そうかといって、名刺交換ばかりしても意味がない。キーマンと仲よくならないといけない。仲よくなるためには、自分をプレゼンするための力。

シリコンバレーで「エレベーターピッチ」という言葉があります。エレベーターが来る何分か何秒かの間に売り込むわけじゃないですか。そのためには絶えずいろんな引き出しに、いろんなデータを入れておかないといけない。売りを絶えず、人にすぐ「私はこういうことができます」とアピールできる力を持っていないといけないと思います。



後編では、チャンスを掴む情報収集の方法や、クラウドファンディングに挑戦した際に学んだことなどをお話いただきます。お楽しみに!