【前編】地元・茨城県真壁町の魅力を知ってほしい!地域の酒蔵で酒造体験を開催、参加者の反応は

「日本酒ブーム」と言われる昨今。日本酒専門店が次々とでき、若い女性がグラスで日本酒を飲んでいる光景も、当たり前になってきました。では、日本酒がどのように作られているかはご存知でしょうか?もちろん、書籍やインターネットで調べれば、工程は書いてありますが、それだけでは「どのような人が、どのような思いで作っているか」は、実感をもって知ることはできません。

今回は、身をもって「日本酒造り」を知ることができる絶好のプロジェクトにReadyforのディレクター・井上が参加してきました。

茨城に魅力がないとは言わせない!真壁町の酒蔵で酒造体験開催!(https://readyfor.jp/projects/kamosu-makabe

このプロジェクトは、「いつでも、どこでも、だれとでも楽しめる日本酒」その名も「こころづけ。」を伝統的な手法で、支援者とともに作るというものです。

その舞台となるのは、今回の舞台、茨城県桜川市真壁町。

茨城県は「魅力度最下位の県」としてたびたび揶揄されており、事実真壁町は交通の便が発達していないことから、訪れる人も減っています。

しかし、真壁町は、鎌倉時代から続く由緒正しい城下町で、茨城県で唯一「伝統的建造物群保存地区」に指定されています。町並みは江戸時代にタイプスリップしたかのような佇まいで、宿泊先の伊勢屋旅館もそのひとつです。

本当はこんなに魅力があるのに…!今回のプロジェクトの実行者である阿部さんは、モヤモヤした気持ちを抱えており、盟友の酒蔵:西岡本店社長の西岡さんと一緒に、プロジェクトを立ち上げるにいたりました。

そんな茨城県桜川市真壁町で日本酒造り。Readyfor井上が、二日間しっかり体験してきました。

(左:阿部 貴仁さん、右:西岡勇一郎さん)

阿部 貴仁さん

茨城県出身。博物館マネージャー、バリスタの経験を活かし飲食店のマネジメント等々、様々な職業を経験。地元茨城を盛り上げるために立ち上がった「桜川本物づくり委員会」のメンバー。2/4〜3/3、真壁町のひなまつりイベントにあわせて、酒蔵の前に期間限定のカフェを開店予定。

西岡 勇一郎さん

天明二年(1782年)から続く酒蔵:西岡本店の代表取締役。酒造りも自らが行います。

代表銘柄の「花の井」は蔵の敷地にある井戸のたもとに桜の木があり、見事な花を咲かせていたことから、その名がついたそうです。


日本酒造りの朝は早い!

12/10(土)。朝5時。2日間お世話になる酒蔵、西岡本店に集合します。

外は真っ暗。気温はぎりぎり1,2度といったところでしょうか。ダウンコートとストーブがないと震えがくるほどの寒さです。さらに慣れない早起き…。みんなちょっと眠そうです。

西岡本店八代目の西岡さんからお話がありました。

この時期は日本酒造りまっさかり。小さな蔵であればあるほど忙しく、まず酒蔵見学などのイベントは難しいはずです。

酒蔵見学はオフシーズンの時に行われることが多く、何か体験できたとしても、少しだけ櫂入れ(日本酒の醪(もろみ)をかき混ぜる作業)をさせてもらえる程度がほとんどです。そんな日本酒造りで忙しい時期に、本格的な日本酒造りをあえてさせていただけるのには理由があります。

それは、職人たちの「櫂入れだけを体験して“日本酒造りってあんなものか”という認識をもってもらいたくない。」という思い。

この時は、まだ「それがどういうことか」よく分かってはいませんでしたが、この2日間で、いろいろな側面からの「日本酒造り」を知り、感じることになります。

今回は、日本酒の最大の特徴である、「洗米」「蒸米」「三段仕込み」という作業を行います。

※今回の体験は、なるべくいろいろな工程を楽しむために、仕事が前後している部分があります。

まずは、手をアルコール消毒。衛生面には細心の注意を払っています。一つの作業をするために毎回アルコール消毒を行うので、杜氏の手はキレイ…というより、実際はアルコールでガサガサです。

一番はじめに水麹という、仕込みの数時間前に仕込み水に麹を混ぜる作業から。仕込み作業のための準備です。その後、お米を蒸すためのボイラーのスイッチを入れます。

今回使うお米は、桜川市産コシヒカリで、お水はもちろんこの地域の井戸水です。「茨城」がぎゅっと詰まったお酒を造っていきます。ゴオオオオという音と、真っ白な湯気が蔵を覆い、お米が蒸されてゆきます。

その後、力のある男性陣が桶にお米をくみ、運びます。(その重さ約20kg!)その他の人たちでお米を布の上に広げ、あっつあつの状態で広げます。冷たい空気に触れさせ、少しでもさますため。このように人の手で広げてあげなければ冷める前にお米同士がくっついてしまいます。


まるで生きものを育てるような…米麹造り

蒸したお米は麹室に運ばれます。麹室は30度近くに保たれている温室で、麹菌を発酵させるための場所。極寒の外とはうってかわって、汗ばむほどの暑さです。

麹菌はとても繊細。一方納豆菌などの菌は日本酒の米麹を殺してしまう強さを持つので、持ち込み厳禁。参加者は一週間ほど納豆を食べずに挑んでいます。もちろん毎日麹菌に触れる職人たちは納豆を食べることはできません。

いよいよ、緑色の麹菌をぱらぱらと降ります。この麹菌、別名「もやし」。漫画「もやしもん」の「もやし」はここからきています。

均等に混ぜた後は、麹菌が一番活動しやすい環境にしてあげます。どんなことかというと…

温度計を指して、ビニールをかぶせて…布団をかぶせて…暖かくしてあげるのです。まるで熱を出した子どもの世話をしているような、もしくは生き物を育てているかのようです。杜氏は麹の様子を常に気にかけ、日本酒造りの期間は数時間に一回の割合でこの米麹の温度を測りにいきます。それはたとえ真夜中であっても…!日本酒造りはとても繊細です。

麹を降って10時間以上たつと、カッチカチの塊になります。これを手でほぐして、さらさらの米粒状態にします。これを繰り返していきます。


日本酒造りのキモ:三段仕込みとは?

突然ですが、日本酒造りになぜ「麹」が必要かご存知ですか?

麹が生み出す酵素がデンプンを糖に分解し、その糖をエサとして酵母が糖を食べてアルコールと二酸化炭素を出す・・・というのが日本酒づくりのメカニズムです。

いよいよ、仕込みに入ります。蒸したお米や米麹を仕込んでいき、お米をつぶさないように「櫂」とよばれる棒でかき混ぜます。簡単なようでお米の粘りがあるので、なかなか混ざりません。

このような光景はよく写真や映像などで見ることがあるかもしれませんね。職人たちはあっさり混ぜているように見えますが、実際にやってみるととても腰が痛くなる大変な作業です。こうして全部で四日間かけて、少しずつ米と米麹と水を足し、もろみが作られていくのです。

お昼ごはんを食べたら、次は「洗米」。明日蒸し上げるためのお米を洗っておきます。ここでは何十キロというお米を洗うため、さすがに手でしゃかしゃかとは洗わず、特別な機械で洗っていきます。

普通のご飯でも、おいしく炊くために吸水はさせますが、それは日本酒も同じ。さらに、秒単位でそれを管理してきます。吸水させなくても、させすぎてもだめなのです。

お米によって吸水時間を変えるのはもちろん、気温や米のコンディションによっても

微調整する必要があるのだとか。ほんの小さな違いでも出来上がりの日本酒の味に影響がでるのだそうです。

いったん今日のお仕事はこれにて終了!朝から暖かい麹室を出たと思ったら、冷たい洗米…と、慣れない環境での作業に疲労困憊です。ちょっぴり休憩したら、夜ご飯。もちろん、お供は日本酒です。


目指すお酒は、高級品ではなく、日々楽しめる「食中酒」

西岡本店の日本酒「花の井」で乾杯です。普段だと、なんとなく飲んでしまうところが、今日一日のその工程がよみがえり、「このお酒の酒米は…」なんて話も飛び出すほど。

西岡さんも合流して、お酒造りについて話を伺います。目指しているのは、コンテストで金賞を受賞するような日本酒、というよりも、食事をしながら毎日楽しめるお酒。とくに燗(温めで飲むこと)でおいしいお酒造りをめざしているそう。燗酒は体が温まり、健康的に飲めるだけでなく、毎日の食事にもよくあいます。

また、西岡本店のお酒はすべて「純米」。つまり、醸造アルコール等を一切添加せず、米と水だけで造られています。もう一杯…飲みたいところですが、明日も5時集合なので、これにて就寝です。

後編では酒造体験2日目の様子をご紹介。地域を盛り上げるために酒造体験で外からの人を呼ぶ活動を行なってみた実行者の阿部さん、参加者のReadyfor井上。実際に2日間を通して体験してみた井上の感想をお伝えします。