今回は、2016年11月19日に開催した「READYFOR OF THE YEAR 2016」という1年に1度のイベントにおいて、READYFOR 代表取締役・米良はるかとReadyforでプロジェクトを実行し、達成させた3名の実行者さまの対談です。70分にわたり、各実行者さまのプロジェクトを起こしたきっかけ、具体的なノウハウについて話し合われました。5回の連載のうちの4回目は、PARTYファウンダー/クリエイティブディレクターの中村洋基さんに「クリエイティブ視点からの、インターネット上でプロジェクトを応援してもらうために気をつけた表現」についてうかがいました。
モデレーター:
READYFOR 代表取締役
米良はるか
お話:
NPO法人フローレンス
駒崎弘樹氏
HASUNA 代表
白木 夏子氏
NPO法人マギーズ東京 共同代表理事
鈴木美穂氏
PARTYファウンダー/クリエイティブディレクター
中村 洋基氏
米良 モデレーターをさせていただきますREADYFOR 代表取締役の米良です。よろしくお願いします。
中村さんにお聞きしたいのですが、中村さんはクリエイティブのお仕事をされていて、社会問題をピロリ菌で初めてやったと思うのですが、社会問題って、日本ではまだまだちょっと重いテーマに感じて、実際には「何となく自分とは遠いよね」で終わってしまう人が多いと思うんです。
今回のピロリ菌のプロジェクトに関して「表現」などで気をつけたこと、そして、何かこれからチャレンジされる人は、どうやってみんなに受け入れられるものに変えていくかという、その「表現」の部分についてテクニックを教えてください。
中村 そうですね。僕は逆に熱い思いというよりは、いきなり友人に呼ばれたら、医者がズラーッといるミーティングの場で。「知らないと思うけど中村君、胃がんの99%はピロリ菌が原因なんだ」って言われて、「えっ、そうなんですか?」と尋ねると、医師団がうなづいてるみたいな。
米良 医師団がうなづいてるの? びっくり。
中村 で、その席には堀江貴文さんも居て、「ホリエモン、はじめまして。なんでこんな取り組みやってるんですか?」と聞いたら、「君みたいな人が、この事実を知らないからだよ」と逆に怒られました。
米良 (笑)
中村 さきほどの話を聞いて思ったのは、美穂さんもそうだし、白木さんもそうなのですが、誰よりも一番初めに前のめりになるエネルギッシュな人というのがまず必要なんだと思います。
ピロリ菌のプロジェクトの場合は堀江さんがそれを演じてくれたんです。ぼくは、広告的なアプローチで考えました。まずは、認知。この事実を知らしめたい。つぎに、アクション。実際に検診を受けてくれればいい。本当は日本人が全員一緒に検診を受けてピロリ菌を除去したら、次の代から、画期的に、日本全土で胃がんの数が減るといわれています。年間500億円ぐらい使っている医療費が少なくなってプラスになりますよね。それが最終的な目標。
広告の頭でいうと、まずは認知だけでいったら一番簡単なのはCMのようなことで、いかにみんなに伝えるかということです。でも、お金がない。で、堀江さんのツイートを、空中戦として使わせてもらう。
そして、テクニックとしてやったことは、まず初めに、スローガン。「胃がんの99%はピロリ菌」っていうのをロゴ付きで作ったんですけど、そこにいたるまでには、コピーライターと、普通に100個ぐらい出します。その中でかなり絞って。当初は、「胃がんは99%防げる」というのが一番強いコピーだと思ったのですが、医師団からは「やや語弊がある」というふうに言われて、その後、細かく微調整していって、これにしたんです。キャラクターもつくりました。まずそういう何かショッキングな事実というか、聞いたらみんな「えっ、そうなの?」ってちょっと前のめりになるショッキングな言葉をとったほうが強いなと思いました。
白木さんのエシカルジュエリーの話にも、婚約指輪、というハッピーな世界観の裏で、鉱山で死にそうになっている人たちがすごい安い劣悪な労働環境下で働いていることを考えたことがあるかって、すごい気づきです。「わっ、ショック」っていう。そのショックな部分というのを意識しました。
クラウドファンディングの成功に関して。当初は、堀江さんと駒崎さんの訴求力があればうまくいくかなとタカをくくっていたんです。でも実際はそんなに甘くない。たとえばスローガンが効きすぎて、賛否両論があったんですよ。ピロリ菌を単純に除去しても、特に高齢者の方などは、身体に負担を強いたりするので必ずしも除去だ除去だと短絡的に啓蒙するな、という勢力があって。
米良 なるほど。除去を止めようとする勢力も出たんですね。
中村 そこで燃えるんですよ。ところが、燃えたとしても最終的に正義はこちらにあるというか、そこまでの思いがちゃんとできていればむしろ燃えたほうがいい、というのがあって。シェアされて、そこで当時のスタッフに火がついたので、炎上を恐れないというのは、駒崎さんも結構そうだと思うんですけど。
駒崎 僕は中村さん、すごいなと思ったんですね。中村さんにはFacebookの名前があるんですけど、途中から「中村ピロリ」にしていますよね。すごいなあって。自分のブランドとか犠牲にしてコンセプトにしてるというのは。
米良 そうですよね。一人で走り切るのはすごく大変だけど、そこに入ってきたメンバーが一緒になって火を起こす。
ちょっと気になったのが、ピロリ菌はそんな結構ショッキングな事実なのに、ちょっと可愛いピロリ菌じゃないですか、あの絵。あのショッキングなものとちょっと可愛さみたいなのは、中村さんのお仕事ですか?
中村 もともとピロリっていう名前が可愛いね、なんかピロピロしてて、などと駒崎さんとも話をしてました。そこで、可愛いけどちょっと毒々しいキャラを描いて。あと一応ロゴマニュアル、キャラクターデザインマニュアルもあって、怖いバージョンも作ってあるんです。
米良 ピロリ菌の?
中村 そうです。でも、暗いことをショッキングにそのまま暗く話すと、そのポジティブな救いがないから。日本人は可愛いのが好きだし、最終的にはいろいろショッキングなことも伝えるけど、好きになってもらわなければ困るというのはありましたね。
次回はいよいよ5回連載の最終回です。
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