今回は、2016年11月19日に開催した「READYFOR OF THE YEAR 2016」という1年に1度のイベントにおいて、READYFOR 代表取締役・米良はるかとReadyforでプロジェクトを実行し、達成させた3名の実行者さまの対談です。70分にわたり、各実行者さまのプロジェクトを起こしたきっかけ、具体的なノウハウについて話し合われました。5回の連載のうちの2回目はNPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんに「プロジェクトへの人の巻き込み方」についてうかがいました。
モデレーター:
READYFOR 代表取締役
米良はるか
お話:
NPO法人フローレンス
駒崎弘樹氏
HASUNA 代表
白木 夏子氏
NPO法人マギーズ東京 共同代表理事
鈴木美穂氏
PARTYファウンダー/クリエイティブディレクター
中村 洋基氏
米良 モデレーターをさせていただきますREADYFOR 代表取締役の米良です。よろしくお願いします。次に駒崎さんにお聞きしたいのですが、駒崎さんのタイムラインを見ていると、どこかの国を背負っている首相かと思うくらい、一般の人まで巻き込んで、いろんな取り組みをされていますよね。駒崎さんを追っていると大体世の中の動きやトレンドが分かる、そういう役割を背負っていらっしゃると思います。人を巻き込む時のポイントと、巻き込み方、テクニックを教えていただけますか。
駒崎 そうですね。さきほど白木さんが、好きなものと社会問題を重ね合わせるといういいお話をされていましたが、実は僕は違うと思っているんです。なぜかというと、僕は「怒り」なんです。2日に1回ぐらいものすごい怒りが湧いてきて。
米良 2日に1回も? それはすごいエネルギー。
駒崎 いつも何かイライラする。例えば、一人親の今54%が貧困なんですよね。政府が一人親に出している手当は、1人目は最大でも4万円なんですが、2人目は5,000円になってしまうんです。「2人目だったら2倍だろう、普通」と。
米良 普通は、一般人からすると、自分と関わり合いがあまりないことのように感じるのですが。
駒崎 分かります。でも、僕は、たまたま保育の仕事をしているので、一人親の方にもよくお会いするのですが、「こんないい人が、こんなに素敵でこんなに優れた人が、何で貧困になっていなければならないの」と思うと、それだけでもう政治家に怒りが湧いてくるんです。「これはもう、ソーシャルムーブメントを作るしかない」「署名をしよう」となって、そうすると結構怒った人はたくさんいるので。
米良 怒りだけをぶつけるんですか、まず?
駒崎 やはりそこが難しくて、僕一人で怒っているとやはり怒りだけでは反応が小さい。根底は怒りでもいいのですが、そこから「そのためには何がどうなったらいいのか?」という次のステップが用意されていないと、人は乗りにくいです。単に「この人は怒っている」となる。
児童扶養手当が上がったほうがいい。そうしたら「上げようよ」「さすがに5,000円はないよね」と言うと、何万と人が集まります。集まって政治家の方に届けに行き、それをメディアに取り上げてもらったりする。そういうことをしていくと徐々に徐々に政治家の人も「動かなきゃいけません」となってきて、この前、児童扶養手当が倍増になったんです。
米良 駒崎さんの怒りから。
駒崎 倍増といっても5,000円が1万円になっただけですけど。
でも、総理が所信表明演説で「われわれは一人親の人たちの児童扶養手当を倍増したんです」と言うんです。手当が上がったのは2年ぶりだから、遅い。「早くやってくださいよ」と思う。それでまたイライラするわけです。
米良 とはいえ、専門でない領域のものもありますよね。それに対して、どういう提案をするべきか、一番いいかというのは、どうしているのですか?
駒崎 それは、例えば、今回の赤ちゃん縁組の件も、まずは児童相談所に話したのがきっかけなんです。
児童相談所の方が「駒崎さん、知っていますか、虐待のひどさを」と言って写真を見せてくれたんです。それが3歳の女の子がおねしょをするからと、お風呂場で熱湯を掛けられた、という写真だったんです。僕の娘が当時3歳だったんです。それを見て本当に吐きそうになって「こんなことが許されちゃいけない」と思いました。
その人に「どうやったらこの子たちを救えるんですか」「どうやったら虐待を少なくできるんですか」と聞いたときに「虐待で死ぬ子の半分は0歳だから、そこで何とかできたらいいよね」と。そして「特別養子縁組という方法が実はあるけれど、世の中には全然広がっていなくて」と聞いて「それだ」と思い、いろいろ調べ始めて。僕は何か事業をやるときには100人から話を聞くようにしているんです。
米良 100人?
駒崎 100人に会って話を聞いて、本を読んで。実際に虐待の対応をしている人にも話しました。
米良 2日に1回怒っていたら2日に1つ事業を起こす計算になりますよね。
駒崎 それは「絶対いつか仕掛けてやる」という怒りリストに溜めておいて、事業化するもの、署名などで解決するもの、審議会で言うもの、政治家に解決してもらう、国会に問わせる…。いろいろあるのですが、やり方に応じて、レベル感によって、どうしていくかをアクションにつなげます。
米良 たくさんの人が巻き込まれているのは、ソリューションのピントが合っているわけですね。
駒崎 そうです。何かに怒るだけだと、やはり「そうだよな」で終わってしまうので、次の一歩が必要。
米良 そこに100人の情報をちゃんと取りいれて。
駒崎 そうですね。専門や、その場にいる人、現場の人たちの話を聞くのは、とても大変で、現場はよく末端といわれますが、僕は先端だと思っていて、そこにこそ答えがあると思うんです。
米良 なるほど。それでお話を聞いた人たちもそのあと巻き込んで。
駒崎 話を聞いて仲間になる。では、一緒に署名したり、一緒に官邸に行きましょうと、仲間が増えていくRPGのような……。
米良 なるほど。RPGのような感覚で。
駒崎 そうです。最初「おまえに何が分かるんだ」とモンスターみたいな人たちも、そのうち一緒にパーティになってつながっているような。
米良 なるほど。一回決めたら基本的には最後までやるということですね。
駒崎 そうですね。紆余曲折しますが。当初この方向かと思ったけど実はこちらだった、ということもあります。
米良 ちなみに私は赤ちゃん縁組のお話を最初に駒崎さんから聞いたときにフローレンスさんに行かせていただいたんです。直接駒崎さんからお話を聞いたのですが、そのとき駒崎さんが来る直前にスタッフの方から「駒崎の最後の事業です」と言われたんです。もうこれ以上新しい事業を絶対にやらせたくない、と。
駒崎 そうなんです。
米良 多分どんどん解決しなければいけないことを思いついてやっていらっしゃるんだろうなと思いました。
駒崎 社内では羽交い絞めにされて「頼むから社会課題を見つけて来ないで」と。
米良 駒崎さんに発見してもらったものをもっと解決する、いろんな部隊がいたらいいですよね。原石からいろいろ考えるなら駒崎さんのところに行って…。
駒崎 最近は社内でもうできないから社外で人を育てています。
米良 そうなんですか。ベンチャーはいわゆるシリアルアントレプレナーにいろいろ事業の作り方を教えてもらいますが、ソーシャルビジネスとか、社会課題の解決の仕方はやはり分からないので、駒崎さんの弟子のような感じで……。
駒崎 そうなんです。僕がNPOをやってよかったなと思うのは、ベンチャーだと競合がありますよね。「御社の売り上げはいくらですか?」と。仲間内でそれは違うでしょう、と思う。そうではなくNPOの場合は潜在的に同志で仲間なので純粋に応援しあえるし、業界みんな仲間のようになれるので、最近すごく楽しいんです。
米良 解決するという目的のためにコラボレーションできる。
駒崎 そうです。仲間。
米良 仲間意識。
駒崎 だからここにいる人、みんな仲間。潜在的に僕の仲間です。
米良 潜在的な仲間。
米良 何か言いたいけれど少し迷っている方は、駒崎さんに言ったら駒崎さんがアイデアを出してくれますか。
駒崎 Readyforを使う人ならみんな。
米良 ありがとうございます。
今回は、2日に1回湧いてくるという「怒り」から事業を立ち上げている駒崎弘樹さんのお話をうかがいました。まずは100人にお話を聞きに行き、「仲間」だと思うこと。そうすることによって気づけば強いパーティができている状態になるのだということ。次回3回目では、ご自身のがん闘病から記者の仕事をしながらがん患者さんが集う場所を作り上げたマギーズ東京共同代表の鈴木美穂さんのお話をうかがいます。
0コメント