今回は、2016年11月19日に開催した「READYFOR OF THE YEAR 2016」という1年に1度のイベントにおいて、READYFOR 代表取締役・米良はるかとReadyforでプロジェクトを実行し、達成させた3名の実行者さまの対談です。70分にわたり、各実行者さまのプロジェクトを起こしたきっかけ、クラウドファンディング成功までの具体的なノウハウについて話し合われました。5回の連載でお送りします。
モデレーター:
READYFOR 代表取締役
米良はるか
お話:
NPO法人フローレンス
駒崎弘樹氏
HASUNA 代表
白木 夏子氏
NPO法人マギーズ東京 共同代表理事
鈴木美穂氏
PARTYファウンダー/クリエイティブディレクター
中村 洋基氏
米良 モデレーターをさせていただきますREADYFOR 代表取締役の米良です。よろしくお願いします。
駒崎 こんばんは。NPO法人フローレンス代表の駒崎です。フローレンスは、幼児保育、障害児保育、小規模保育、保育の事業を行なっています。
今回Readyforでは赤ちゃん縁組事業ということでクラウドファンディングをさせていただきました。
1週間に1人、赤ちゃんが虐待死しているという状況があります。多くは望まない妊娠によるもので、貧困や、社会的な孤立、親の精神疾患などが重なって、そのような悲劇が起きてしまうのですが、赤ちゃん縁組は妊娠期間が終わって「出産しても大丈夫、育ての親に託せるんだよ」ということで、育ての親に託して赤ちゃんの命を救える、育ての親も赤ちゃんに出会える、という事業です。
それを今回Readyforさんに力を貸していただいて事業の立ち上げ資金を得られて、本当に心から感謝しています。よろしくお願いいたします。
米良 ありがとうございます。それでは次はHASUNAの白木さん。実はReadyforのクラウドファンディングの実行者ではなく、私が非常に尊敬している女性起業家で、ソーシャルビジネスの世界の中でも第一線を走っていらっしゃるので、是非、今日のテーマにぴったりだと思いお招きさせていただきました。HASUNAの事業について、簡単にご説明をお願いいたします。
白木 こんにちは。ジュエリーブランドHASUNA代表の白木です。2009年の4月に立ち上がって、今8年目になるのですが、今、私がつけている指輪や、イヤリング、結婚指輪、婚約指輪などのジュエリーを製作販売している会社です。本店が表参道にあり、他に新宿伊勢丹や名古屋にも店舗があります。
世界10カ国ほどから、ジュエリーの素材となっている金や石、ダイヤモンドを仕入れ、フェアトレード、リサイクルの金属を使い、できる限り人や社会、地球環境に配慮をしたジュエリーづくりを行っている会社です。
私がこの会社を立ち上げた2008年の頃は、まだクラウドファンディングという概念も、プラットフォームも日本になく、是非このReadyforを使いたかったと思うぐらい、本当に素晴らしい仕組みだと思いながら、米良さんのことを応援しています。
このジュエリーブランドが大きくなればなるほど途上国の鉱山やジュエリーを作る工房などで児童労働がなくなり、環境破壊が行われるような鉱山がなくなっていくことを目指しています。よろしくお願いいたします。
鈴木 こんにちは。NPO法人マギーズ東京の共同代表の鈴木美穂と申します。本業は日本テレビの報道記者をしています。入社して3年目、24歳のときに乳がんになり、それからずっと社外活動でがん患者さんをサポートする仕事をしてきました。そうした中で2年半前、イギリスでマギーズセンターという、私が闘病中にあったらよかったなあと思うものを見つけ、これを日本にもってきたいと思い、一番最初に打ち明けてネット上に出させてもらったのがReadyforさんでした。
当時、私は記者しかしたことがなかったので、どうやってお金を集めたらいいのか全く分からない中で、Readyforさんで挑戦させていただいて当初2カ月間で700万円の寄付を募集開始したのですが、2,200万円集まったことで、大きくプロジェクトが動き出しました。そこで本当にたくさんの方々に知っていただけたおかげで、そこから1年半の間に約8,000万円集まり、無事先月マギーズ東京をオープンすることができました。
ご利用者さまには完全に無料で相談に乗ってもらったり、お茶を飲んでくつろいだり、仲間と出会えたりという場にしていこうと、挑戦中です。1カ月で、オープンのときは約1,100人の方々に来ていただいて、今も1日平均40人ぐらい全国から相談に来ています。
中村 PARTYの中村と申します。デジタル広告を業界大手の広告代理店で14年しておりました。広告代理店では、大手クライアントのデジタルキャンペーンを考える仕事をしており、独立しても同じようなことをしておりました。
予防医療普及協会に出向く機会があり、いろいろな病気は予防をすれば医療費が安く済むことがわかりました。一番初めに関わらせていただいたのが「胃がんの99%はピロリ菌」という話で、Readyfor歴代、最大の支援者数を集めることができ、無事成功しました。次は歯周病や大腸がんなど、ほかの予防医療にも少しずつ幅を広げようと思っております。よろしくお願いいたします。
米良 中村さんは、ソーシャル分野はこれが初めてですか?
中村 初めてです。広告代理店にいたときに、公共広告機構などの社会的メッセージをクリエイティブに落とすことはあったのですが、クラウドファンディングは初めてでした。広告というのは、広く伝えるのは得意だけど、それが果たして人の心をどういうふうに動かすのか、行動を変えるのか、というのはあまりできてない気がしていて、広告、認知の力で人の命を長らえさせたり、元気にさせられるというのはすごいことだと思い、ぜひやってみたいと思っていました。
米良 白木さんは鉱山の労働環境を見て、そこからジュエリー事業を立ち上げられました。社会問題を解決するために、いろんなやり方があると思うのですが、「ジュエリー」という誰もが持てるようなものに落としたことがソリューションだと思います。課題解決の中で、どういうやり方を意識して始めたのですか。
白木 そうですね。私の幼少期、母はファッションデザイナー、父は繊維関係の商社で働いていて、住んでいた町が愛知県一宮市という繊維産業で栄えてきた町でした。小さい頃から洋服やアクセサリーなど作るのがとても好きで、物心ついた頃から将来ファッションデザイナーや芸術関係の仕事に就きたいと思っていました。
でもその後大学時代に国際貢献、国際協力の世界があるということを知るんです。この世の中でいろんな人が毎日亡くなっていて、子どもが亡くなっていて、飢餓や貧困や密輸、密漁、いろんな負のできごとがいっぱいある中で、「私は何をしたらいいんだろう」と考えたときに、まずは貧困問題を大学で勉強してみようと思いまして、イギリスの大学で貧困問題の勉強をしました。
そのときにフィールドワークでインドに行ったんです。南インドのチェンナイという、非常に格差がある町だったのですが、そのチェンナイから5~6時間、車やバスで行った所に村がありまして、「アウトカースト」と呼ばれる方たちが住んでいる村でした。皆さんもご存じの通りインドにはカースト制度があるのですが、そのカースト制度からあふれた人たちが1億人ほどいて、その方たちが住んでいる村だったんです。
そこで目の当たりにしたのが鉱山労働でした。その鉱山では、子どもが働いていて、大人たちも毎日すごく暗い表情をしながら働いていました。食べ物も非常に粗末な物を一日一食しか食べられておらず、子どもたちは学校に行きたくても行けない。
採掘をしているものは、ジュエリーの原材料や、電気機器類の原材料、家を作る原材料となっている大理石など。私たち先進国の便利で豊かで美しい生活のためにあるものが、そんな貧しい場所から来ているんだという矛盾にぶち当たったんです。
これを解決していくにはどうしたらいいだろうと、そのあと国連でインターンをしてみたのですが、私が見てきた鉱山の中にいる人たちは、この資本主義の仕組みの中で、一番末端にしわ寄せが行ってしまっている状況だということに気づき、これは国際機関だけではやはり足りず、ビジネスの仕組みを変えて解決していかなければならない、と思いました。
そこで私は、自分で会社を立ち上げてジュエリーの素材となっている金や石を買えば買うほど現地の人たちも潤っていく仕組みを作れればと思ったんです。
米良 最初にあるのが、自分のやりたかったことや好きなことで、それと自分の目の当たりにした社会問題をミックスして事業を作ったんですね。やはり、ソーシャルムーブメントを本気で起こすとなった時には、大きなエネルギーがいりますよね。起業というものはすべてそうかもしれませんが、本当にたくさんの人を巻き込まなければいけないし、そのときにやはり本当に好きであることが大事なのかなと思っています。社会正義的に始まったものだと、だんだん苦しくなっていくのでは、といろいろなプロジェクトを見ていて思っているところです。
白木 それはすごくあって、起業前に私は何をやったらいいのだろうと考えていたとき、何かソーシャルイシューを解決したいと思ったのですが、貧困問題、環境問題、世の中はありとあらゆる問題だらけですよね。それを解決するにはNPO、NGOや個人で寄付するなどいろんな関わり方がある中で、どこに関わっていても結局社会貢献はできるのだから、自分が本当にやりたいことをそこでやればいいのでは、と思ったんです。
それで私は、小さい頃に一度諦めたファッションや芸術の分野で何かできたらいいなと思って、それでこの分野を選んだんです。
米良 なるほど。ありがとうございます。本当に好きであることがとても大事で、だからこそ、夏子さんが人に慕われたり、コミュニケーションができるんだ、と改めて聞きながら思っておりました。
白木 ありがとうございます。ちなみに米良さんは何が好きなんですか?
米良 私は、人を応援することがとても好きなんです。Readyforのプラットフォーム自体、美穂さんのように、最初はやりたいと思ってもまだその一歩をどう踏み出していいか分からない方が、ワーッと階段を登っていき、「がんの相談といったら美穂さん」というような存在になっていく。その姿を見ているのが、私にとっては一番幸せで楽しいことだと思っています。
Readyforは社会問題のプラットフォームのように見えることもありますが、私にとっては、自分が好きでやりたいことをそのままやっていると思っています。何か好きなことを見つけるのは大事ですね。
次回は、NPO法人フローレンス 駒崎弘樹氏にうかがう、「物事を起こす時の人の巻き込み方」です。お楽しみに!
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